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【書評・要約】ベストセラーコード

平積みされていたのを見てジャケ買いした。

ある本がベストセラーなる確率を算出するモデル(判定機)を作ってみたよ!というお話。専攻がコンピュータサイエンスだったので単純に興味をそそられたのと、テーマとしても(最近のAI本の中では)まともそうと思ったので読んでみた。以前読んで面白かった「シグナル&ノイズ」と同じ訳者だったのでハズレないかなと思ったのもある。

テーマ・プロット・文体・キャラクター

この本の中では、テーマ・プロット・文体・キャラクターという4つの軸で本(物語)を分析している。

超カンタンにまとめると売れる本の条件は「テーマに一貫性があり、ストーリー(プロット)にメリハリがあって、読みやすい文体で、主体性のあるキャラクターが主人公である」ということだ。何を当たり前のことをという感もあるけど書かれてる内容は納得感あった。

文書解析と機械学習を使ってモデル構築をしたみたいだけどそのあたりの話は詳しく書かれていない。あくまでモデルによって出た結果に対して考察をしていく本なので科学好きよりも本好きにオススメ。モデル使って出した各種ランキングもあって楽しめる(ただし全て海外の本)。

これは夢のない話か

売れる本には一定のパターンがあってベストセラーになるかをある程度の確率で機械によって判定出来てしまいました、という話なわけで、ちょっと夢がないなあと感想を持つ人もいるかもしれない。

ただ、普遍的に好まれるものという何にでもあるわけです。それらを定量的に見えるようにすることによって、基本をおさえた上でさらに面白くするにはどうしたら良いのかというより創造的な部分に人間の頭を使うことができるようなる。そういう意味で今まで以上におもしろい物語を作る可能性を広げてくれるモデルだと言えるので、これは夢のある話だと自分は思う。

ちなみにこの本で何度も出てくる「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」と機械が選んだベスト本「ザ・サークル」は速攻で買ったので読む予定。

ベストセラーコード 「売れる文章」を見きわめる驚異のアルゴリズム

ベストセラーコード 「売れる文章」を見きわめる驚異のアルゴリズム

【書評】選択の科学 コロンビア大学ビジネススクール特別講義|「選択」の力とは。

厳格なシーク教徒が語る「選択」の力とは

「選択」をテーマにしている著者が、文化的背景が選択にどんな影響を与えるのか、私たちは無意識は選択に影響を与えるのか、選択肢が多いほうが幸せなのか、などなど様々なテーマで「選択」について述べている。

著者のシーナ・アイエンガー氏は、全盲であり厳格なシーク教徒の家庭で育ったが、アメリカの公立学校で「選択」こそアメリカの力だと言われたらしい。

そんなわけで、著者の自叙伝的な感じでいかに「選択」が素晴らしいものなのかを説く内容なのかと思ったら、違った。 過去に行った研究に基づいて、学問的な話をしている。

何を選ぶのか。

選択は人間の本能であり、たとえ既に欲しいものが分かっている状態でも、選択肢が用意されているほうが最終的な満足感は高いらしい。

で、人間はどうやって自分が満足できる選択をしているかというと、それも文化的・宗教的背景によって違う。例えば、アメリカの子供は全部自分で選びたいけど、アジア系の子供は母親が勧めるものを選びたい、みたいな。 アメリカ的な価値観だと「親が決めたものを選ぶなんてー、反自由!不幸!」みたいなことになるけど、それは彼らの価値観であって、それぞれ何が良いと感じるのかは違うのです。

一番興味深かったのは選択肢が多いことが満足度につながらないこと。例えば、ジャムを買うときに24種類から選ぶより6種類から選んだほうが購入率が高い、みたいな。 実際、日常生活でも洗剤とか歯磨き粉を買うときにたくさんありすぎて、もう何でもいいわとなってしまう。そんな細かいことまでいちいち選択したくないのだ。

ザッカーバーグが毎日同じ服をきてるのは、毎日の無駄な選択に大切な時間を使いたくないかららしい。

「選択」を選別するのも、今の時代は大切なのかもしれない。

選択の科学 コロンビア大学ビジネススクール特別講義 (文春文庫)

選択の科学 コロンビア大学ビジネススクール特別講義 (文春文庫)

【感想・あらすじ】ナラタージュ|島本理生

※ネタバレあり

おとなしめな子の情熱的な恋愛

主人公の泉と、泉の高校時代の先生「葉山先生」はお互いに思い合っているものの、葉山先生が抱えるとある事情ででうまくいかず、、という話。

泉はとにかく純粋で一生懸命先生に尽くそうとしている。

この人からはなにも欲しくない。ただ与えるだけ、それでおそろしいくらいに満足なのだ。

とか言っちゃうくらい。20歳そこそこでこの台詞が出てくるってすごい。

泉が先生に恋心を抱くきっかけが、高校3年生のときにクラスで浮いてしまっていた泉を先生が気にかけて守ってくれた、ということなんだけど、こういうちょっとおとなしめの子が実は情熱的な恋愛をしがち。な気がする。

相手はダメおとこ

そして、相手役の葉山先生がだめなやつである。

  • 泉だけ特別扱いして学校で噂になっちゃう。

  • 泉の卒業式にキスしちゃう。一応先生と生徒やん。

  • 奥さんとは「別れた」て言ってたのに、実は別居中で籍は抜いてない。

という感じ。

実は奥さんは執行猶予中で、 姑(先生の実母)と同居→姑と奥さんの関係がうまくいかず→奥さん精神的に追い詰められる→姑が家にいるときに放火、という結構だいぶヘビーな理由。

精神的にやられていた先生も、自分のことを頼りにして好意を寄せてくれる泉に救われていたんだ、と思われる。それなのにどうして泉と先生はうまくいかなかったのかなぁ、奥さんに罪悪感はあるだろうけどそれでもなぁ、と思ってしまう。

ただ、こういう登場人物たちが島本理生さんのこざっぱりした文体で描かれていて、重い感じが全然ない。思ったことをストレートに伝えているのもよい。

ナラタージュ (角川文庫)

ナラタージュ (角川文庫)

【書評】ダークサイド・スキル

要は政治力、既存概念を再ラベリング

仕事のなかでダークサイドのスキルっていうとんでもないものを想像するけど、この本では論理的思考、プレゼン能力、エンジニアなら技術力のような仕事そのものに役立つスキルをブライトスキルに対して、段取り、根回し、上司への情報の上げ方とかをダークサイドスキルと呼んでいる。まあ、ありきたりな言い方をすると政治力とかコミュニケーション能力とか段取り力っていうんでしょうか。

まあ、書いてあることとしてはいたって普通で、何をいまさら感があるのだけど、政治力、コミュニケーション能力、段取り力、このへんを仕事を推し進めるためのダークサイドスキルなんだと再ラベリングした見せ方がうまいなあと思いました。

ある程度以上の組織で働く人は流し読みしてもよいかも

自分は今までどベンチャーみたいな少人数の会社でしかた働いたことがなかったので、この本でいうところのダークサイドスキルの必要性は感じてなかったのですけど、それなりの規模の今の会社に来てこのへんのスキルはなんだかんだ大事だよなあと痛感してます。

大企業の課長とか部長あたりに向けて書かれた本みたいだけど、普通のメンバー社員が読んでもそれなりに役立つと思いまし、言ってることは正しいけどもうちょっとやり方あるだろ的な人に渡すのもよいかもしれない。

ダークサイド・スキル 本当に戦えるリーダーになる7つの裏技

ダークサイド・スキル 本当に戦えるリーダーになる7つの裏技

【書評】21世紀の貨幣論

知られざるマネーの歴史

物々交換の不便を解消するために貨幣が作られたというあるある通説が初っ端から否定される衝撃的で出だし。

これは今後の展開に期待できるぜ!と思ったのですが、そこから各種金融の歴史、経済学者の歴史やその系譜みたいな話がつづき正直読むのがしんどかった。それなりの経済学の歴史的知識がないとすんなり理解するのが難しいんだろうなあという内容。

大きな気付きとしては、お金とは実体ではなく社会的な技術!というそれっぽいものが得れました。

あとの感想としては、お金というものを学問的に扱うのにみんな頭を悩ましてきたんだなあというくらいです。とにかく読むのだしんどかった!

ビットコイン、仮想通貨ブームに思うこと

この本を読むと、ビットコインって実はあんまり新しいものでじゃなくて、国以外が発行するプライベートマネーと呼ばれる形で歴史上なんども登場していたものが、初めてデータ上でしか存在しなくなったもの、くらいにしか思えなくなりました。

で、プライベートマネーがうまくいく条件として小さいコミュニティでそのマネーを使う人達がお互いに信用し合っている、というのがあるのだけど、あんまりよく知らないで書いてますけど、ビットコインは取引所のなんちゃらとかでも揉めてるそのうちうまくいかないくなるんじゃないかなと思いました。

世の中で新しいと思われているものも歴史というマクロ視点では実は新しくなかったという。愚者は経験に学び賢者は歴史に学ぶ、ってこんな感じでしょうか。

21世紀の貨幣論

21世紀の貨幣論

【書評】経済は地理から学べ!

地理って面白い

地形とか資源とか貿易とか。地理的なものにまつわるお話を幅広くまとめている本。

初っ端からルール工業地帯とか北海油田とか環太平洋造山帯とか、地理選択だった人間には懐かしい単語がいっぱい。 大人になってからのほうが地理とか歴史を知るのが楽しい。学生だととにかく覚えることが最優先だから、経済とか政治的な要因まで調べてられないのだ。

タイトルの通り、経済に関するトピックが中心なんだけど、アンカレッジ空港の今とかナイジェリアの内戦とか幅が広くて面白い。ただこの本だけだと短すぎてわからないこともあるかも。そういうときはググって解決。

敵を知り己を知れば百戦殆うからず

地理を学ぶことは、「敵を知り己を知れば百戦殆うからず」ていうことなのかなと思った。

資源があるとか作物が育ちやすいとか輸送が楽だとか、そういう前提条件を知っておいたほうが今起こってることの原因とかが理解しやすいんじゃないかと思う。

というか、そんなに難しく考えなくても、例えば東京の人気の駅・不人気の駅の理由は地理的原因があるんだ、とか。

経済は地理から学べ!

経済は地理から学べ!

【書評】国境の南、太陽の西「その欠落そのものが僕自身だからだよ」

村上春樹流のダメ男

やりがいのある仕事、愛する家族がいながらも、初恋の人が忘れられない男の話。

主人公の「僕」は、運命的に出会った女性と結婚し、義父(金持ち)から借りた青山のビルで”ジャスを流す上品な”バーを経営している。そのバーに初恋の女性「島本さん」が現れ、なんやかんやあったけど最終的には一夜を共にするが、翌朝目覚めると島本さんはいなくなっていた。。という感じ。

「抗えない」とか「僕の中の何かが」とか春樹節でオブラートに包まれてるけど、要はダメ男の話です。

最後の「僕」の独白がすごい

でも私はこの小説が大好きだ。

最終的には妻とやり直すのだけど、そのとき妻に「僕」が語った言葉を引用する。(長いけど)

「僕はこれまでの人生で、いつもなんとか別な人間になろうとしていたような気がする。(中略)でもいずれにせよ、僕は違う人間になることによって、それまでの自分が抱えていた何かから解放されたいと思って居たんだ。僕は本当に、真剣に、それを求めていたし、努力さえすればそれはいつか可能になるはずだと信じていた。でも結局のところ、僕はどこにもたどり着けなかったんだと思う。僕はどこまでもいっても僕でしかなかった。僕の抱えていた欠落は、どこまでいってもあいかわらず同じ欠落でしかなかった。(中略)僕の中にはどこまでも同じ致命的な欠落があって、その欠落は僕に激しい飢えと乾きをもたらしたんだ。(中略)ある意味においては、その欠落そのものが僕自身だからだよ。」

自分に対する不安とか人生への恐怖とか自己愛とかいろいろあふれてるんだけど、ああそうかと。そういうどうしようもないものへの怯えが、「僕」をそうさせちゃったんだ。わかる。

ここにたどり着くために、ぜひともこの小説を読んでいただきたい。

国境の南、太陽の西 (講談社文庫)

国境の南、太陽の西 (講談社文庫)